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FOOD

#黒瀬佐紀子の時短料理

連載直前インタビュー!黒瀬佐紀子さんに聞いた、缶づめ料理がシアワセを運ぶワケ

2018.08.02

パカッと開ければたちまち広がるグルメワールド。それが「缶づめ料理」。PLSTmagazineでは、毎日忙しい人のために、ひと手間かけるだけで見違えるほどの美食に変身する缶づめレシピを紹介していきます。まずは指南役の缶づめ料理研究家・黒瀬佐紀子さんにその魅力を伺いました。黒瀬さんによる、「缶づめ料理のシアワセ哲学」をお楽しみください。

一度試したら必ずハマる!数え切れない缶づめ料理の魅力

「まず第一の魅力は、開けてみたくなるワクワク感。どんなものが入っているかわからない…だから、買って開けたくなる!ガチャガチャのカプセルみたいな楽しさがあります。

そして、備蓄食品としての優秀さ。缶づめは、食品を缶に詰めて密封し、加熱殺菌して常温での長期保存性を与えた食品。なので殺菌剤や保存料などの食品添加物は使っていないのです。だからこそ、防災としてだけでなく、日常的な一つの食材としても活用できるんです。キッチンに常備して、いざという時に使えるのはとても便利だと思います」

「そして、なんといっても簡単&時短であること。わざわざ材料を揃えなくても、冷蔵庫の残り物を見て何と合わせようかなぐらいの気楽さで十分。例えばサバの味噌煮缶で“サバみそマーボー豆腐”を作るなら、すでに味噌味である程度骨格ができているので、辛みの豆板醤を入れればいい。また、味噌と相性のいいものは?って考えていくと、チゲ鍋のベースにできるかな、とか。そうしてレパートリーも自然と広がっていくと思います。

さらに、作るうちに楽しくなってくるのが、お皿周りのスタイリング。器やナプキン、カトラリーでコーディネートした卓上に料理を置くと、缶づめからの劇的なビジュアル変化を楽しめます。カジュアルな缶づめ料理だからこそ、テーブルウェアで気分を盛り上げてみてください」

缶づめレシピを美味しく作るコツは「シンプルに調理すること」と「アクセントを作ること」

「缶づめにすでに味があるから、なるべく加える調味料は少なくシンプルに仕上げるのが、美味しく作るコツ。味がはっきりしているものには、淡泊な豆腐や白菜やキャベツなどの野菜を組み合わせると、ちょうどいい加減の味になると思います。また、缶の中身はすでに柔らかいので、コトコト煮過ぎちゃ駄目なんです。先に調味料と加える具材を火にかけ、缶の中身は基本温めるぐらいのタイミングで入れることがポイントです。

また、加える具材はフレッシュで食感のあるものがおすすめ。缶の中身は柔らかくホロホロっとするのがいいんだけど、そこにシャキシャキする野菜や、パリパリするごまやナッツを加えると、食感が面白くなると思います。
また、スパイスや香味野菜、薬味を加えるとぐっと味がしまり、美味しくなるんです。

缶づめ料理は、あれこれ手間をかけるような、作り込む料理じゃないんです。必要なのは、シンプルさと少しのアクセント。だから誰が作っても失敗しないし、そして楽しいんです!」

果てしなく遠かった料理研究家までの道のり。缶づめ料理の原点がここに

「学生時代から呑むことと料理をすることが好きだったんです。美術系の大学だったのですが、運動会や文化祭などイベントのたびに各工房がおつまみを作るのが習慣で、それを誰よりも楽しんでいました。普段の学生生活でも、作品や美術、アートを勉強しに来ている志高い人が多い中、“私は料理がやりたい”って思っていたけど、なかなか言えなくて。ブロンズなどの金属を溶かす大きい釜があったんですが、“私はここでピザを焼きたい”なんて思っていました。

食と仕事がどうしたらつながるのか、模索する期間はそこからも長く、パッケージデザインなどの仕事に就くのも、自分のやりたいことと全然違うし…と悩み、一旦、イギリスの美術大学に留学しました。その学生時代でも私が見ていたのは、人が何食べてるかとか、各国の料理は何かとか。パッケージやディスプレイもすごく見ていました。だけど、それでも、自分の就きたい職業がわからなかったんです。当時は、フードコーディーネーターやフードスタイリストという言葉が浸透していなかった時代だったので…」

「26歳で日本に帰ってきて、もう一度食の世界で何かビジュアルデザインの仕事に就こうと思って探したんですが、時代はザ・就職氷河期。26歳で新卒の私なんかは、どこも採ってくれないんですよね。さすがにもう仕事しなきゃという焦りから、食の世界を諦め、契約社員としてテレビ番組用のフリップなどを作るデザイン会社に行ったんです。

いざ会社に入ると、パソコンのマウスも使えなくて。でもすごく親切に教えていただきながら2年経ったんですが、上司と契約更新の話をした時、思わず自分のポートフォリオを出し、“私はこういうことがやりたかったんです”“食の世界でやりたくて”みたいなことを話しちゃったんです。“でも頑張ってここで仕事を続けて……”とか言って止めてくれるかなと思ったら、あっさりと“君には別の道があるよ”と言われ辞めることになっちゃって。まあ結局、自分自身、やっていることとやりたいことの乖離がたまらなくなっていたんですよね」

やりたいことに正直に、無我夢中で駆け抜けた3年を経てわかったこと

「その後、飲食店で働いたり、料理家さんの手伝いをしている中で、“フードスタイリスト”という仕事があることを知ったんです。その講座を受けに行ったりもしたけど、何しろキャリアがないし、人に自慢できるものが何もないことに行き詰まっていた時、後に私の師匠となるフードスタイリストの仕事を手伝うことになりました。

ある料理本の制作現場で、彼女の器選びや色選びを見て、“あっ、私のやりたいことはこれだな”って思いました。どこで器のレンタルをしたらいいのかわからないような状態から、少しずつ師匠に教えてもらい、そのうちぽつんぽつんと仕事が来て。その間隔が段々と狭まって、気がついたら3年もっていました。広告とかで、料理をさらにおいしそうに見せるという点では、造形や工作工芸という自分の得意分野が生かされていた気がします」

「ただやっぱり、元々は宴会のおつまみが好きというか。大学のイベントの時にピザを焼いた、あの感覚。みんなでわいわい食べる、呑む、みたいなのを実現するのが理想なので、仕事と並行して料理自体も勉強しました。そうして突き詰めるほど、料理って化学実験みたいって思ったんですよね。学生時代に金属工芸を専攻していたのもあったからかな。例えばお肉を揚げるのも、何度までは油に入れておかなくちゃいけないけど、それ以降は低い温度でも肉に火が入るから油から出すとか。金属溶接の火加減と似ているいるんです。手先の器用な作業には、工芸で使うピンセットや筆を使ったりもしました」

人生のターニングポイント、缶づめとの出会い。ここで見つけた自分なりの表現

「すごく時間はかかったけど、自分のやってきたことと、やりたかったことが、うまくリンクし始めたなって思い始めた矢先、“缶つま”の書籍制作のお仕事をいただいたんです。缶づめは、そのまま食べても美味しいものなので、盛り付けなど本当にちょっとの手間ができる人を探していらして、“料理家ではないけど料理ができるスタイリスト”である私にお話をいただいたんだと思います。

するとその『缶つま』(世界文化社)の本がすごく評判良くて、レシピを『缶つま』のメーカーさんのブックレットに掲載していただくことになりました。するとその本がすごく評判が良くなって。時短や防災がテーマのイベントなどにも呼んでいただいて、そしたら、あれよあれよという間に缶づめ関係の本を5冊ぐらい出していました。

今私がやっている缶づめ料理は、これまで寄り道してきた数々の経験のいいとこどりになっているんじゃないかなと思っています。呑みのアテであること、完成されたものにちょい足しをして変化を楽しめること、スタイリングでおしゃれに見せること…。
私にとって缶づめ料理は、自分らしさを表現できるもの。自分が何者かもがいていた時と比べると、自分らしい表現ができることって、シアワセですよね。
ちっちゃい缶の中には、私流の“シアワセの哲学”が詰まっているんです」

PLSTmagazineで待望の連載がスタート!

PLSTmagazineにて、黒瀬佐紀子さんの連載コーナー「たかが缶づめ、されど缶づめ!」がスタート。うまカンタンな料理を知りたい人、必見!
黒瀬 佐紀子Sakiko Kurose

缶づめ料理研究家。フードスタイリスト。
雑誌・書籍・広告・TVなどで活躍するほか、商品プロデュースも手掛ける。著書は「缶つま」、「缶詰食堂 いつでも手軽に安うまレシピ」、「かんたん晩酌缶詰レシピ50 ほろ酔い♪女子つまみ」、「さば缶ダイエット ヤセるホルモンがふえる!」。

Photo:Takuji Onda
Text:Yuki Miyahara
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